紅葉を楽しんでほしいと特別公開された聴竹居。業界でも知る人ぞ知るの建物なのに、着いてみるとものすごい人だかり。紅葉の筋からやってきたのだろうか。中へ入れるのは2時間後だというので、先に大山崎山荘美術館でルーシー・リーとハンス・コパーの器を鑑賞。点数は多くなかったが、何度見ても新鮮で飽きることがない。気がつけば待ち時間を消化していた。
設計したのは藤井厚二さん。竹中工務店を退職後、欧米をめぐり環境工学を学ぶ。帰国後京都大学の教授となる一方で、1928年に『日本の住宅』を岩波書店より上梓し、日本の住宅のあり方を説いた。持論を実証すべく、1万坪もの土地を手に入れ建てられたのが自邸である聴竹居。
30分の時間制限や限られた部屋だけで隅々拝見できなかったが、天井に設けた排気口や導気のためのチューブトンネルなど、気になっていた部分を丁寧に説明いただいた。女中部屋に何十と並んだブレーカーを不思議に思ったら、この住宅はオール電化だったそうだ。海外からコンプレッサーを取り寄せ造りつけた冷蔵庫はえらく電気を食ったそうで、空調のことはよく考えられたが、電気代には無頓着だったという落ちに笑ってしまった。