蛇行剣

いつも静かな奈良県立橿原考古学研究所附属博物館が賑わっていた。2023年1月25日に富雄丸山古墳から出土した蛇行剣のクリーニングが終了し、次の処理が行われるまでのあいだ特別に展示されている。先週土曜日より1週間の限定。それは賑わうに決まっている。

平日のどこかで訪れるつもりだったが、昨夜『忠内香織の奈良ガイド』にアップされた投稿を聞き、すぐに見たくなった。水曜日だったが、雨降りなのでまだましだろうと踏んだ。
空いている時間が読めないので、開館時間の9時を目指した。10分前に着くとすでに列ができていたが、大した人数ではなかったのでひと安心。Xには1時間待ち、2時間待ちと書かれていたので覚悟していたが、蛇行剣が展示されている部屋まで45分だった。

エントランスの天井は三角ポリゴンを用いたドーム天井だった。乃村工藝社の仕事だそうだ。これまで天井を見上げたことは一度もなかった。行列のおかげ。

ホールに入ると列は3つに分かれていた。左から65歳以上、一般、JAF会員。一般は400円だが、JAF会員は会員証を見せれば350円だそうだ。チケットを購入し、右奥の通路へ進んだ。

列は続く。正面奥の特別展示室に蛇行剣が展示されている。左奥には常設展示室の入口があり、この通路は両展示室へ誘う導入部分なのだが、来るたび思う。なぜ明るくしないのだろう。展示室の入口をわかりやすく装飾し、導入部らしい空間づくりをすればよいのに。

蛇行剣。刃の部分が蛇のように屈曲している。これは6回屈曲しているそうだ。剣身長は237cm、鞘長は248cm、把(つか)から石突までの総長は285cmもあるそうだ。
展示室では壁面ガラスケースに沿って時計回りに進んだ。出土時からクリーニング終了までの過程が写真で紹介されていて、最後に蛇行剣が展示されていた。入室に制限がかけられていたおかげで、コンベア状態にならずにゆっくり見ることができた。

把部分は木製で、左から楔型把頭、把間(つかあい)、把縁突起、鞘口だそうだ。黒い部分は黒漆だそうで、1,600年経っても消滅していないことに感動した。X線CTスキャンによれば、鞘の樹種はホオノキと同定されたそうだ。

白い部分はウレタンで、緑の部分はシリコン樹脂だそうだ。ウレタンは断熱材の一種だと言っていたので、建築材料にある発泡ウレタンフォームを用いたのだろう。液状なのでどのような形状にも流れ込み、発泡して膨らみ、10分で硬化。カッターで切れるので除去も楽。

先端部分。中央の膨らんでいる部分が鞘尻で、その右側が石突。これらにも黒漆が塗られているそうだ。左側の先端が丸くなっている部分が剣先。

土産は高松塚古墳の石室壁画『女子群像』が描かれた野帳。前に飛鳥宮が描かれた野帳を購入したが、そのときにはなかったように思う。新作だろうか。

玄関を出ると行列はなく、整理券が配られていた。雨中の行列を申し訳ないと考えたのだろう。でも周囲には何もなくここで待つしかないので、増えてくればピロティからあふれ、結局傘をさすことになるのではないか。と余計なことを考えながら博物館をあとにした。