南山城古寺巡り

浄瑠璃寺。本堂を彼岸、三重塔を此岸、間にある池を浄土に見立てた世界観や、国宝であるこれらの伽藍を観たくて訪ねたが、安置されている仏様もすばらしかった。
本堂へ入ると思わず息をのんだ。7体の阿弥陀如来が並んで座し、暗い明かりに身にまとった黄金が鈍く輝いている。これが西方極楽浄土というものだろうか。
阿弥陀如来に目を奪われたが、両脇に安置されている四天王も国宝。ほかにも、三重塔には薬師如来、灌頂堂には吉祥天女や大日如来が安置されているそうだ。これらは秘仏だが、定期的に開帳されるそうなので、次回は開帳日に訪ねたい。
浄瑠璃寺をお参りするために計画を立てたが、せっかくなので円成寺もお参りすることにした。このお寺には運慶作国宝大日如来が安置されているし、二棟造りの鎮守社も観てみたかった。でも円成寺へ行くバスは午前中に1本しかなく、行程を考えればこれに乗るしかなかったが、帰りのバスは2時間後にしか来ない。円成寺の境内は小さく、ゆっくりまわっても1時間で済んでしまったので、残り時間を大日如来をつぶさに観て過ごそうとしたが、暗くて詳細がわからず、寒くてつま先がしびれてきたので、早々に寺をあとにした。
さてどうするか。浄瑠璃寺まで歩くしかないか。Googleマップの検索結果は2.5時間だったが、近道がありそうだし、速足なので1時間は短縮できるだろう。腹を括って歩きはじめた。
国道は往来があり頭を空にして進んだが、県道に入ると往来はなくあられまで降ってきた。曇天で寒く寂しい気分だったが、引き返すわけにはいかない。畦を通り、森を通り、ゴルフ場を通り、集落を通った。上り坂で息が上がり、下り坂で足が悲鳴をあげた。でも歩いたおかげで次回に保留した岩船寺へ寄ることができ、数々の磨崖仏も拝見できた。予想通り1.5時間で移動できたことにほくそ笑み、吉祥庵でいただいた温かいにしんそばが美味しかった。