補償

先の日曜日は静岡県知事選。現職の川勝氏が4選を果たした。静岡県はリニア中央新幹線静岡工区の着工を認めておらず、2027年だった開業の延期が決定しているそうだが、これでさらに延びるかもしれない。でも本当のところ、リニア中央新幹線は必要なのだろうか。
JR東海は東海道新幹線の老朽への備えと言うが、隣に同じものをつくるのではなく、海山とルートがまったく異なるので、それで代わりとなるのだろうか。所要時間の大幅な短縮は、東京、名古屋、大阪はその恩恵を大いに受けるかもしれないが、他の中間駅はどうだろう。スーパー・メガリージョン構想は、東京~大阪が1時間で結ばれれば、両都市を結ぶ全域がひとつの都市のように機能するというようなものだが、そんなことはあり得るだろうか。中間駅地域が活性するかどうかは、これまでの全国の新幹線における状況を鑑みれば、自ずと答えは出ているだろう。
神奈川県、山梨県、長野県、岐阜県には中間駅はできるが、静岡県は全区間がトンネルとなるため駅ができないそうだ。もしかして静岡県は腹を立てているかも知れないが、でも静岡県にとってはリニアよりも大井川のほうが大切なようだ。だからトンネルができることで水が減ってしまう可能性のある計画は認可できない。これについては大阪府知事が、「国家プロジェクトを完全に止める権限が自治体にあるのであれば、自治権としてやりすぎだ」と発言したようだが、国でも民間でも、問題があれば認可できないのは当然だろう。
静岡県にとって大井川は大切な水がめだそうだ。多数のダムや水力発電所があり、表流水は産業用水や生活用水に使われている。流域の4つの市町では地下水を利用していて、約1,000の井戸が生活や生業を支えている。でも大井川はむかしからよく渇水し、取水制限が常態化。1994年には牧之原台地の茶畑が枯れ、2018年には5か月近くも節水が行われた。ダムや水力発電所のせいでよその水系へ水が流れてしまい、1980年代には『水返せ運動』が起きた。国を動かし、流量の維持確保が義務づけられた。2006年には富士山系へ流れていた水の一部が大井川へ戻った。このような経緯から、大井川流域の住民は水問題に対して意識が高いとか。
山に降った雨は地下水となり、その水脈にトンネルを掘れば水が湧く。JR東海は、トンネル掘削による大量湧水の可能性は小さく、流域地下水への影響は極めて小さいと言うが、掘ってみなければ、トンネルができてみなければわからないのではないか。だから補償が必要。1999年、掛川市で新東名高速のトンネルを掘削中に水が沸き、周辺で農業用水を採っていた沢が枯れ、地下水を利用した簡易水道が断水。住民は十分な補償を得られなかったそうだ。
国家プロジェクトとはいえ、JR東海はお高くとまらず、お願いして工事をさせてもらっているという認識を持たなければならない。工事のせいで不具合が発生するのであれば、それに対し補償をすることは当然だろう。それをしてはじめて先へ進めるのではないだろうか。

ワクチン接種

父から1回目のワクチン接種を終えたと連絡があった。まだ数時間しか経っていないが、今のところ体調に異常を感じることはないそうだ。2回目は会場で予約を済ませたとのこと。
私も早く済ませてしまいたいのだが、接種券がまだ届かない。ニュースでは連日のように大規模会場がガラガラでもったいないと訴えているが、接種券がないので行きたくても行けない。政府や自治体が鈍間で、手際が悪く要領を得ていないのでどうしようもない。
昨日のニュースにも苦笑した。国がワクチンと共に送ってきた注射器が、一般的で繊細な1ミリリットル用ではなく、太く短く目盛りの荒い2ミリリットル用だったので、必要な0.3mlを摂りにくく、ひと壜をうまく使いきれずに残りを廃棄しているという。昨日今日はじめたわけでなく時間はあったはずなのに、なぜ最適な道具を用意できないのだろう。
うちの自治体は20歳~64歳への接種券の発送をはじめたそうだ。私の年齢では6/21から発送されるそうなので、うまくいけば今月中に1回打てるだろうか。
職域接種への早期対応のために前倒ししたそうだが、職域接種に接種券は不要だったのではなかったか。厚労省のQ&Aに書かれていた。でもいま確認するとAが更新されている。接種のときには必要ないが、後日提出しなければならないそうだ。更新前はまったく必要ないように書かれていたので、それだとどのように接種の管理をするのか疑問だった。
職域接種といえば、森ビルの集団接種は手を広げすぎだろう。森ビル社員とその家族だけでなく、所有ビルに入居する企業や店舗の従業員、所有マンションの入居者までを対象とし、その規模は10万人にのぼるとか。そんなことが許されるのかと思ったが、上述のQ&Aに書かれていた。最後まできちんと面倒を見られるのであればかまわないとか。でも10万人といえば立派な自治体の人口ほどもある。果たしてうまくいくだろうか。

ゴルフ≠コンサバティブ

8代目ゴルフが発売された。マイルドハイブリッドとなり環境に優しくなったが、デザインや設えは厳しくなったようだ。自動車のフロントデザインはLEDのせいでおかしくなってしまった。いつまでもコンサバだと思っていたゴルフも、LEDを採用した先代からブレはじめた。
オーラルワイダーを咥えたようなラジエターグリルはまるでプリウス。『IQ. LIGHT』と称し、ヘッドライトにBMWのような眉毛がついた。左右のライトを結ぶようにバー状のライトがついたが、エンブレムの部分は途切れている。昼間はわからないが、夜ライトが点くと格好悪く見えないだろうか。車内では、『インテリアアンビエントライト』と称し、デコ車のようにトリムなどが光るようになったが、みっともなくないだろうか。スイッチやACの調整ノブがタッチ式になったので、走行時の操作は困難だろう。タッチ面は永久に指紋を拭かなければならない。
車を持つならゴルフと決めているが、これではその気が失せてしまう。もうひとつのブレない車はポルシェ911だが、こちらは一生かかっても手に入れられない。

Windows as a Service

画像:Microsoft

次世代Windowsの開発は公にされていたが、それはあくまでWindows 10の大型アップデートに用いられるものだと思われていた。ところが昨日、Windows 10のサポートが4年後に終了すると発表されたので、Windows 10の大型アップデートではなく新しいWindowsがリリースされるのだろう。来週オンラインイベントがあるそうなので、そこで発表されるのだろう。
2015年にWindows 10が登場したとき、メジャーリリースはこれで打ち止め、今後はサービスとしてWindowsを提供すると言っていた。タイトルにもある『Windows as a Service』だ。
Windows 10はWindows 7から無償でバージョンアップできたが、不具合が起きることを恐れ製品版を購入した。だから新しいWindowsがリリースされれば、また製品版を購入しなければならない。一体いつまで縛るのか。WaaSは永久に呪縛を解いてくれるのではなかったのか。
なぜ新しいWindowsなのだろう。Windows 10のアップデートではいけないのか。久しぶりに儲けようと考えているのか。でもOSはもはや収益源と考えていないのではなかったか。
いまや稼ぎ頭はOfficeで、次はMicrosoft Azure、Windowsは3番手。驚いたが、Microsoft AzureのOSはLinuxベースだとか。もはやマイクロソフト=Windowsではないだろう。

好きのありよう

安西カオリ著『ブルーインク・ストーリー』。新しいエッセイ集だと思い手に入れたが、前作『さざ波の記憶』の改編だった。前作は水丸さんのほかにも様々な題材を取り上げていたが、本作では副題の通り水丸さんのみ。前作から10編と、書き下ろしが11編収録されている。
前作を読んだ時も感じたが、水丸さんはカオリさんに対し、親子でなく対等の人間として接していたのではないだろうか。それは水丸さんが父親であることに照れがあったからで、カオリさんもそんな父親を、父としてではなく一人の人間として敬愛していたように思う。
関心したのは水丸さんの好きなものについて。スノードームやこけし、民芸の器やブルーウィロー、中日ドラゴンズやカレーやジャズを好きなことは知っているが、その加減が半端ではなかった。ただ好きなだけでは済まされず、その極に達するまで追求しようとした。確固たる理念があった。好きのありようをカオリさんへ繰り返し説いていた。
カレーは食べるのも好きだが自分でも作る。カレー部をつくり、カレーが白米に合うのであれば日本酒にも合うはずだと、カレーと日本酒の組み合わせを唱えた。こけしやブルーウィローは産地まで出かけた。こけしは11ある里を巡り、好きなこけしの工人の生家を訪ねた。小椋久太郎作を愛したそうだが、はじめの一体は目の表情が気に入り買い求めたそうだ。
そんな父を見てきたので、これらを描くカオリさんの文章も深くて重い。歴史や背景を丁寧に描いてくれるので、そのものをより理解することができる。
前作はデザイナーによる凝った造本だったが、本作の新潮社装幀室による装幀も素敵。本文のテキストはブルーインクで、ティファニーブルーの表紙は仮フランス装。カヴァーは茶色の紙に黒文字と丸く刳られた装画のバランスがいい。帯がレモン色でアクセントになっている。
ところで、現在水丸さんの展覧会が世田谷文学館で開催されている。会場風景や図録を見る限り、5年前『美術館「えき」KYOTO』で観た展覧会と同じ模様。でもスピンオフのポスター展や、『​​スペースユイ​​』と『山陽堂書店』でも​​展覧会が催されるようなので、観に行きたい。