百寿初めての仕事

別冊太陽が創刊50周年だそうで、沙弥郎さんが記念のイラストを描かれたそうだ。菓子店を営むお孫さんのインスタグラムに投稿されていた。シンボルの太陽を描き直したもので、オリジナルの女性の太陽に対し、沙弥郎さんの太陽は男の子。『太陽くん』と呼んでいるそうだ。
イラストを用いたトートバッグやクリアファイル、ステッカーが作られたようだが、どうしたら手に入るのだろう。ツイッターを検索してみると、書状とステッカーをセットに撮影された画像が複数投稿されていた。書状を読むと、「あなたが選ぶ別冊太陽ベスト3」と題された人気投票が行われたようで、ステッカーは応募者全員に配布されたようだった。
投票結果は、1位『柚木沙弥郎 つくること、生きること』、2位『芹沢銈介の日本』、3位『茨木のり子 自分の感受性くらい』。お孫さんのお店では、『柚木沙弥郎 つくること、生きること』を購入するとステッカーがもらえるそうだが、その本はすでに購入済み。
書状にも書いてあったが、ネットを検索して見つけたのがhontoとのタイアップ。別冊太陽のうち、『柚木沙弥郎 つくること、生きること』、『芹沢銈介の日本』、『柳宗悦 民藝 美しさをもとめて』、『土井善晴 一汁一菜の未来』、『鳥獣戯画 決定版 絵の「原点」にふれる』のいずれかを購入すると、ステッカーがもらえるとのこと。よかった。鳥獣戯画以外はすべて持っているのだが、鳥獣戯画について1冊読みたいと思っていたのでそちらを購入。
ようやくステッカーが手に入ったが、届いてみると緑色だった。お孫さんのインスタグラムに投稿されているものも、人気投票のプレゼントも赤色だった。オリジナルのシンボルは赤色だし、そもそも太陽は赤色で表現される。なぜ緑色などつくったのだろう。赤色が欲しい。

簡単に変えるものではない

昨日は友達の仕事を手伝うため、久しぶりにノートPCを持ち出した。監理の仕事をしなくなったので、外でパソコンを使わなくなっていた。だから物は試しとWindows 11へアップグレードしていた。でもWindows Updateを行う以外に起動していなかった。使っていなかった。
仕事は定期報告書の「関係写真」づくり。手本のエクセルデータを利用し、写真を差し替えコメントを編集する。点検項目の長文をコピペするため、点検結果表のエクセルファイルを別に開く。たくさんある写真の順序を確認するため、エクスプローラーを別に開く。要するにいくつも開いて作業を行うのだが、Windows 11の致命的な欠点を忘れていた。
Windows 10までは、タスクバーボタンを結合しない設定にすれば、開いた分だけボタンが並び、目当てのものをすぐにクリックすることができた。でもWindows 11ではその設定がなくなったので、目当てのものを表示させるには、エクスプローラーやエクセルのアイコンにポインタを置きサムネイルを表示させ、目当てのものをクリックしなければならなかった。
手伝うくらいなので作業量があった。結局1日で終わらず持ち帰ることに。持ち帰り仕事をすることは平気だが、かかる手間や効率の悪さが嫌になり、半日かけてWindows 10へ戻した。
時間をかけて身につけた操作の仕方がある。癖と言ってもよいが、Microsoftはそれをないがしろにしている。使い勝手より見た目を優先した。このままではWindows 11で仕事はできない。サポートは再来年までだったと思うが、改善されない限りWindows 10を使うしかない。

ブラッド・メルドー

ブラッド・メルドーのピアノソロを拝聴した。会場はOBPにある住友生命いずみホール。
昨夏開催されるはずだった。数枚しかアルバムを持っておらず、ピアノソロの楽曲も無知だったが、聴いてみたいとチケットを入手。でも来日直前に行われた手術のせいで中止となった。
払い戻しを受けると熱は冷めた。11月に改めて来日が発表されても気は向かなかった。でも数日前再び火がついた。イープラスから届いた当日引換券発売のメールがきっかけだった。
来日を思い出し、検索してみるとツアーは始まっていた。ツイッターでは大絶賛だった。セットリストを見てみると、レディオヘッドの『Karma Police』やデビッド・ボウイの『Life on Mars?』、ビートルズ、ニール・ヤング、ボブ・ディラン。YouTubeに同じような楽曲のライブ映像を見つけたので視聴した。観終えるとすぐにチケット購入ページへ飛んだ。
素晴らしい時間だった。2時間弱で17曲。アンコール4回。最後は挨拶のためだけに出てきてくれた。ツアー最終日だったのでサービスしてくれたのだろうか。
演奏は、『Karma Police』も『Life on Mars?』もよかったが、ビートルズの『Golden Slumbers』に鳥肌が立った。組曲のようなアレンジだった。最後に演奏したガーシュウィンの『How long has this been going on?』は、原曲に素直なところが気持ちよかった。

終演後ピアノの傍へ行き、椅子の位置と座面の低さを確認した。右側の席だったので手元は見えなかったが、それ以外の部分は見えた。お尻を半分しか乗せないスタイルが面白かった。
椅子を低くすると、音量は出しにくいが繊細な演奏ができるそうだ。上述のライブ映像では手元が見えたが、10本の指が自由自在に繰り出されていた。次は左側の席に座りたい。
席といえば、クラシックホールは座席の幅が狭めなのだろうか。体が硬いので股が開いてしまうのだが、映画館では気にしたことがないのにここでは終始気になった。

春日大社と杉本博司

春日大社にて杉本博司さんの展覧会『特別展 春日若宮式年造替奉祝 杉本博司―春日神霊の御生(みあれ) 御蓋山そして江之浦』を観賞。関連イベント『杉本博司と春日神霊の美術・奇譚』も拝聴することができた。ファックスで申し込んだ後、当落通知はどうするのだろうと思っていたので、葉書が届いたときは嬉しかった。料金後納のスタンプは中門のイラスト。

大宮と若宮を参拝すると、若宮の前に建つ細殿(ほそどの)・神楽殿に作品が展示されていた。細殿には海景『日本海、隠岐』。若宮は水の神様だからだろうか。

神楽殿には新作『甘橘山(かんきつざん)春日社遠望図屏風』。「屏風の中の春日の神様が、若宮を見て喜んでおられるようだ」とは花山院弘匡(かさんのいんひろただ)宮司。
満足のいく解像度へ到達したとのことで、屏風仕立ての作品はデジタルカメラで撮影されているそうだが、「デジタルならではの恩恵を享受している」と杉本さん。そのひとつが写ってほしくない部分を消すことだろう。この写真では携帯電話の電波塔を消してあるそうだ。

展覧会場は春日大社国宝殿。入口には小田原文化財団の門幕。金沢文庫より収まりがよい。

エントランス。右の石組は、春日山にある鳴雷神社で発見されたピースを石塔に仕立てたものだそうだ。常設展示室『神垣』はパスして鼉太鼓(だだいこ)ホールへ入ろうとすると、「『神垣』にも杉本さんの作品を展示しています」と受付の方。ありがとうございます。

暗がりの通路の先にぼんやりと一条の光。『那智瀧図』だった。まさしく神霊の御生。

新作『春日大宮暁図屏風』。開幕2日前に完成したそうだ。背の高い園芸用の三脚を使用し、中門と同じ高さから撮影しているそうで、初めて見るアングルが新鮮。
本殿は目にしてはならないが、気配だけでもと千木が写るようにしたそうだ。杉本さん曰く、千木は神霊と交信するためのアンテナのようなもの。うまいことおっしゃる。
中門の雨樋が写っていない。近世にはなかったので、消すことで当時を再現したとのこと。

新作『春日大社藤棚図屏風』。チラシをはじめて見た時は驚いた。藤の花が浮遊している。
実は撮影予定になかったそうだ。3月末の明け方に『春日大宮暁図屏風』の撮影を行った際、ふと見た『砂ずりの藤』にご神託が下っているように感じたそうだ。開門時間まで30分しかなかったが、テントや説明札などを急いで片づけてもらい、撮影にこぎつけたのだとか。
こちらも三脚を使用したそうだが、俯瞰した藤の花がまるで雲塊のようだった。白鹿に乗り常陸国一之宮からやってきた武甕槌命(タケミカヅチノミコト)を想像し、極楽浄土へ導くために来迎した阿弥陀如来を想像した。あるいはUFOがこの中に潜んでいるとか。
横長の画像は上下をトリミングしているのではなく、数枚撮影した画像を切り貼りしているそうだ。刻々と変わる光に合わせ、シャッターを押すたび露出を変えているとか。
屏風の裏側には唐紙が貼ってあるそうで、文様は杉本さんの図案による藤の花だそうだ。ここで見ることはできないが、図録の袖に印刷されている。雲母摺(きらずり)のような仕上がり。
実は屏風の前に「結界」があるのだが、杉本さんに倣い消してしまった。ごめんなさい。

鼉太鼓ホールには13基の光学硝子五輪塔。初めて観たのは猪熊弦一郎現代美術館だったか。その後は京セラ美術館、金沢文庫、円教寺でも観た。今や出塁率の最も高い作品ではないか。

でもここの五輪塔は格別だった。水輪に鼉太鼓が映り込んでいる。
2階の大小展示室では、杉本さん蒐集の春日美術や春日大社宝物に加え、藤田美術館、常実坊、興福寺、金沢文庫、名古屋市博物館の収蔵品と、個人蔵の品が展示されていた。
杉本さんの蒐集品に目新しいものはなかったが、他は初めて観るものが多く、国宝の『本宮御料古神宝類』や重文の『古神宝銅鏡類』は、ガラスにへばりつき鑑賞した。
壁面展示ケースの畳敷きが素敵だった。金沢文庫や姫路でも敷いていたが、こちらは展示品の配置や間隔、照明の具合もよかったのだろうか、強く印象に残った。杉本さんも展示についてご満悦のようだ。古美術展示のひとつの完成形とまでおっしゃっている。
春日荷(にない)茶屋でぜんざいをいただきイベント会場へ。100人ほど入っていただろうか。中央最前列に千宗屋さんが座っていたのでニヤニヤした。本当にいつも一緒なのだ。
イベントは二部構成。春日大社国宝殿主任学芸員の松村さんと、金沢文庫主任学芸員の瀬谷さんが展示作品の解説を行い、その後杉本さん、花山院宮司、瀬谷さんの鼎談が行われた。杉本さんの口が達者なことは周知の事実だが、花山院宮司もとても滑らかな舌をお持ちだった。
江之浦測候所へ春日社を勧請したエピソードが興味深かった。広大な土地なので鎮守の杜が必要。春日美術が集まるのは春日明神のお導きだろう。江之浦は武甕槌命が常陸から大和へ飛来した直線上にあるので、きっとここで休憩されただろう。春日大社へ手紙を送ったが一蹴された。河瀨直美さんが杉本さんと花山院宮司を引き合わせた。春日社には専任の神主が常駐し、すべからく月次祭など神事が執り行われている。近々現代パフォーマンスを奉納する予定。
鼎談で話されていた『春日寂び』を確認しようと再入場すると、鼉太鼓ホールにも展示室にも大勢のお客さん。松村さんはいつもと異なる展示に心配されていたそうだが、思った以上のお客さんの数に驚いているご様子。関東から来られた方がいたと喜ばれていた。
宮司が杉本さんは春日大社の御師だとおっしゃっていたが、杉本ファンは彼の作品や蒐集品だけでなく人柄が大好き。だから展覧会が開催されればどこへだって駆けつける。

アンディ・ウォーホル・キョウト

閉幕間近のアンディ・ウォーホル展へ。ZENBIと京都市京セラ美術館をはしごした。

ZENBIはまさかの設え。プロデューサー井村氏の発案だろうか。『ANDY WARHOL KYOTO』の企画もされているそうなので、気が入っておられるのかもしれない。
右端に見えるアイボリーの箱は、ウォーホルが京都で訪れた場所や、この施設のような関連した場所に設置されているそうで、天板にあるQRコードを読み込むと音声ガイドが流れる仕組みだそうだが、読み込んでも先へ進めず聞くことができなかった。

エントランスのウォーホルのみ撮影可。受付の奥を見ると、カウンターの上にキャンベル・スープ缶がピラミッドに積まれていた。意外にも和の壁に合っていた。
展覧会は『原榮三郎が撮った京都-Warhol in Kyoto 1974』と題し、ウォーホルが1974年に来日した際同行した、現代美術作家の原榮三郎氏により撮影された写真を展示するもので、桂離宮や三十三間堂、祇園などを訪れているウォーホルが収められていた。
一緒に写っていた女性は誰だろうと調べると、安斎慶子という方で、来日の際大丸で開催された展覧会のプロデュースをされたそうだ。ウォーホルは常にビニールのショッピングバッグを手に提げていたが、これを「バッグ」として扱っていたようだ。
次回の展覧会は寛次郎さんだそうだ。鍵善良房のお店へ行くと、黒田さんの棚に飾られた器にため息がこぼれるが、家の中には他にもゴロゴロしているそうだ。羨ましい限り。

京都市京セラ美術館の会場は、杉本さんの『瑠璃の浄土』を観賞した東山キューブ。
大勢のお客さんだった。作品はすべてアンディ・ウォーホル美術館の所蔵品とのこと。日本初公開の作品があったり、キービジュアルになっている『三つのマリリン』は門外不出だそうだ。

ショップ出口。会場入口へ向かう場所でもあるのでこの掲示なのだろうが、見通しが悪い。
前に来た時も感じたが、この会場のプランはこれが正解なのだろうか。入口までの通路が長いので気が急いてしまう。落ち着かせるために全面ガラスにして庭を見せているのだろうか。
こちらから入り、鑑賞後通路を戻ってくれば、庭の景色もゆっくり見ることができるだろう。

自画像からスタート。カモフラージュは晩年のモチーフだそうだ。アイキャッチのつもりだろうか、タイトルとロゴがうるさくないか。スマホに限り全作品撮影可とのこと。

ZENBIでの写真は1974年来日のものだったが、はじめて来日したのは1956年だそうだ。
葉書は都ホテルのもの。1956年だと村野さんが携わる前。どのような施設だったのだろう。

キャンベル・スープ缶の作品は1つだけだと思っていたが、スープの種類が32あったので、作品も32種類あるそうだ。考えたことなどなかったが、この商品を選んだ理由があった。子供の頃からトマトスープを飲み続けていたそうだ。バックストーリーがあるのだ。

肖像シリーズの中に教授がいた。そういえば昔広告に使用されていたような。

毛沢東。当時中国からクレームはなかったのだろうか。現在なら制作できないだろう。

エルヴィス・プレスリー。もしかして宝誌和尚(ほうしわじょう)立像を観たのだろうか。

大きなカモフラージュの作品はよくわからなかった。隣の最後の晩餐と関係性があるのだろうか。スペースがもったいないと思った。無知なのでもっと作品を観たかった。

最後の晩餐。絶筆だそうだ。1987年、ダ・ヴィンチの最後の晩餐があるサンタ・マリア・デッレ・グラツィエ聖堂の傍で本作の展覧会を行ったが、オープニング後に体調を崩し帰国。先延ばしにしていた胆嚢の手術を受けるが、術後の処置が悪かったせいで亡くなった。享年58歳。
ウォーホルは敬虔なカトリック教徒であり同性愛者だった。THE BIG Cの「C」はCancerの頭文字で、昔エイズは同性愛者の癌と呼ばれていた。バイクはタンクを見るとホンダウィングが描かれている。ホンダウィングは勝利の女神ニケのことなので、癌に打ち勝つという意味が込められているのではないか、とはある方の考察。バックストーリーがあるのだ。

三条駅まで歩いたが、思い出しTIME’Sへ。解体されておらず安心した。囲いは撤去されていたが、テナントは入っていないようで、テナント募集中の横断幕が寂しかった。
1階の明かりはデベロッパーだろうか。ウェブサイトの募集案内では、一棟貸しの場合500万/月、フロア貸しで1階の場合200万/月、区画貸しで最大区画の場合140万/月とのこと。

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