ちこちこ小間ごと

二度目の『ZENBI―鍵善良房―』。はじめて訪ねたオープニング展示はゆかりのある黒田辰秋さんだったが、今後はどのような企画をしてゆくのだろう、鍵善良房の美術館ならではの展示をしてほしいと案じた。そしたら次は山口晃さんだという。お店の手提げ袋の仕事でご縁があるそうだ。不意を突かれたが、山口さんの作品は『ZENBI』の空間に調和していた。
展示は3部構成。2階の展示室2は小説『親鸞』の挿画、展示室3は京都にまつわる書籍や雑誌への掲載作品、1階の展示室1は黒田さんの作品を用いた山口さんのインスタレーション。

とても楽しみにしていた小説『親鸞』の挿画。200点くらいあっただろうか。真面目なもの、ふざけたもの、意味深なもの、意味のないもの、細密なもの、ラフなもの。多種多様だがどれも上手い。技量の高さを見せつけられる。この小さな作品に山口晃が凝縮されている。
総数は1,000点を超すそうだが、ひと月ごとに入れ替えるそうなので、ほぼすべてを拝見できるだろうか。挿画以外の作品も前後期で入れ替えるそうで、パスポートなるチケットが販売されていた。3回分の価格で4回入場できるというお買い得。

壁の絵は『新京都百景 貴船川床』。描き下ろしだと思ったが、3年前の作品のようだ。ガラスケースに入った器は、前回も展示されていた黒田さんの『乾漆八稜水指裡耀貝螺鈿』。
展示室3におもしろい作品があった。お店に掛けてある『くずきり』の看板の模写だが、2枚を展示ケースのガラスを境に反転させて掛け、ガラスに沿って見るとピタリ重なって見える。山口さんは前の展示中に訪れているはずなので、寛次郎さんの書体に触発されたのだろうか。
ミュージアムショップでは、山口さんの作品集がいくつか販売されていて、『親鸞 全挿画集』も置いていた。見かけるたびに欲しくなる本だが、先に小説を読んでからと決めていた。それなのに購入してしまった。なぜならサイン本。これが衝動買いというもの。

テーブルにお菓子の見本がいくつか置いてあった。この展覧会のために誂えたものだとか。どれも美しい佇まいだが、ひとつだけ変わっていた。饅頭に焼きごてで人型らしきものが描かれている。『ためいきちゃん』と呼ばれていて、小説『親鸞』の挿画に登場するそうだ。鍵善良房本店で単品販売されているというので、帰りにひとり連れて帰った。600円なり。
知らずに『ためいきちゃん』を撮影していた。琴線に触れてシャッターを押したのだろうか。饅頭のほうはかなりスマートだが、顔はよく似ている。「はあ」ってため息ついている。

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