GWは大阪へ戻ったが、前半は腐っていた。二日酔い、友人からの叱咤、仕事。こんなことなら戻らなければと思ったが、気を取り直し、杉本博司さんの展覧会を観に国立国際美術館へ。
作品だけでなく、蒐集しているコレクションも展示されるということだが、彼の作品を観たことがない者としては、作品が少なかったらどうしようと心配した。だから『海景』がたくさん並んでいるのを目にしたとき、うれしくて泣きそうになった。緩やかな弧を描いた壁に、たっぷり間をとって配された9枚の『海景』部屋の照明は落とされ、額縁の中だけが灯っている。ベンチに腰かけて正面の海を見つめていると、周囲が一面の海になり、穏やかな波の音が聞こえてくる気がした。悶々としていたことをすっかり忘れ、こころ静かに見つめ続けた。
コレクションのほうも見ごたえがあった。古代の化石にはじまり、A級戦犯の写真、隕石、正倉院の裂、アポロ計画のときの宇宙食まで、彼の並々ならぬセンスにうなった。壁一面に並んだ東大寺二月堂焼経の深い青や、ピーター・ズントーが息をのんだといわれる当麻寺の古材が、とても美しくため息がこぼれた。作品や額装、コレクションや展示什器、空間構成。完璧だった。
図録も気が入っていた。自らコレクションを撮影し、アートディレクションを手掛けている。図録に1万円も払うのかと一瞬ためらったが、これも彼の作品なのだ。