出雲

「いまは旧暦で神無月ですが、全国の神様はこの時期出雲大社へ集まっているので、出雲だけは神在月なんです」ラジオでそう話しているのを聴いて、よしと出雲大社を訪ねた。
新幹線で岡山まで行き、やくもに乗り換えて出雲市駅へ。山陰へ上る途中は雪景色だったが、出雲では幸い降っておらず安心した。でも暑い雲に覆われた空は帰るまで晴れなかった。

菊竹さん設計の『出雲大社庁の舎』。今度の出雲行きはこの建築を観るためでもあった。おそらく数年後には取り壊される運命。竣工後50年が経っているのであちこち劣化していた。雨漏りがひどいと聞いていたが、頂部はすっぽりシートに覆われていた。内部はもぬけの殻だった。

こちらの施設はまだ大丈夫。軒先や開口部の水平が印象的。

出雲大社をあとにして、隣にある『島根県立古代出雲歴史博物館』を訪れた。
槇さんの設計だが、フロアマップを見ると、一般向けのスペースより後方スペースのほうが大きい。所蔵庫や調査研究のためのスペースだろうが、敷地を含めて施設の規模が大きく、なんだか締まりがなくのっぺりした印象を受けた。コールテン鋼で覆われたボリュームが、よりそのように感じさせたのかもしれない。
展示のほうは見ごたえがあった。出雲大社や神話にまつわるもの、古代からの島根地方の暮らしや文化が詳細に紹介されていた。青銅器や金色の大刀がずらり並ぶ展示は圧巻だった。

2000年に出雲大社境内から発掘された宇豆柱も展示していた。3本を金輪で束ねられていたそうで、束ねた直径は3mにもなるそうだ。年代測定などを行った結果、鎌倉時代のものではないかとのこと。出雲大社といえば古代の巨大神殿説だが、この太さから検証したところ、高さ48mはまったくの出鱈目ではないそうで、巨大神殿の模型を見つめながら思いを馳せた。

最後に稲佐の浜へ。八百万の神々はこの浜へお着きになり、ほど近い上宮で縁結びや来年の収穫などについて神議りをされる。なんとも魅力的なお話。