Isamu Noguchi: Tools

竹中大工道具館で『イサム・ノグチ Tools』展を観賞。関連イベントである、NYのイサム・ノグチ財団・庭園美術館館長のブレット・リットマンさんによる講演『イサム・ノグチ-その彫刻と道具』も拝聴。会場はデザイン・クリエイティブセンター神戸。

作品ではなく、作品を作るための道具を紹介する展覧会。3つの展示台に、木作品、石作品、陶芸作品、AKARIの制作に用いる道具が並び、初めて見るAKARIが数点展示されていた。

展示室の奥には、『スライド・マントラ』の模型が映る牟礼のアトリエの写真と、左のモニターでは制作風景の映像が3編。大きなAKARIの制作風景が興味深かった。

奥から受付の方を見る。左手前の展示台には、イサム・ノグチが作品に使用した石材。
花崗岩、庵治石、本御影、万成石(桜御影)、スウェーデン産花崗岩、玄武岩。牟礼にアトリエを構えてからの石種だろうか。イサム・ノグチは、牟礼にアトリエを構えてから大きく進化したそうだが、それはひとえに和泉正敏さんのおかげだろう。2021年に死去されていたことを知らなかった。今年はお二人の仕事場だった『イサム・ノグチ庭園美術館』を訪れてみたい。

左の西洋カンナは押して削り、右のカンナは引いて削るが、イサム・ノグチはどちらの道具も扱うことができたそうだ。彼の技術力を示す展示だろうが、これらを見ているうちに、混血だったが故に起きた様々なエピソードを思い出してしまった。

初めて見る道具。簡潔なつくりにとても惹かれる。フランス式鋸ヤスリで、「鉄道」と呼ばれているそうだ。師ブランクーシから石材の加工を許され、手渡された道具だそうだ。

AKARIの提灯部分の治具。使いこまれて真っ黒だった。昔ベッドサイドにAKARIを置いていたが、穴を開けてしまい泣く泣く処分した。オゼキのオンラインショップでは、現在ほとんどの製品が売り切れとなっているが、需要が多すぎて生産が追いつかないのだとか。

図録。素敵なカバーなのだが、67ページで2,000円。図録も価格高騰のあおりを受けているのだろうか。隣にあった『イサム・ノグチ 発見の道』は、2021年に東京で開催された展覧会の図録だそうだが、264ページで2,900円。同じ年に竹中大工道具館で開催されたフィリップ・ワイズベッカー展の図録は1,500円。装幀の感じが似ているので挙げたが、同じデザイナーだった。

講演会場へは新神戸駅から連節バス『Port Loop』が運行していた。一度は乗ってみたい連節バスだが、東遊園地に建つ『こども本の森 神戸』を見たかったので歩いた。
中之島同様弧を描いているが、元々設置されていたパーゴラが弧を描いていたので、それを踏襲したのだろう。中央に円形の花時計があるので、直線では馴染みが悪い。
花時計のある場所は元々噴水だった。神戸ルミナリエで噴水を囲むように装飾が設置された時があった。長らく訪れていないが、神戸ルミナリエはまだ開催しているのだろうか。北側のブロックも久しぶりに歩いたが、芝生広場やカフェなどができ、大勢の人で賑わっていた。

南側より。RC打ち放しの円錐は初めて見た。手前の板状のものは彫刻で、カール・プラントル『KAWASAKIへの道-瞑想のための彫刻』だそうだ。1970年の大阪万博に出展されていたそうで、タイトルのKAWASAKIは、川崎製鐵寄贈とあったので、それだけのことのようだ。
カール・プラントルさんは初めて知った。オーストリアの彫刻家で、2010年に亡くなっている。ウェブサイトが残されていて、石彫が多数掲載されているが、どれも好みの作風。でも作品より興味をそそられたのは、住居やアトリエの建物。ウェブサイトで紹介されているBildhauerhausと呼ばれる建物は、Johann Georg Gsteuなる建築家の設計によるもののようだが、建築家を検索してもヒットしない。忘れ去られてしまったのだろうか。カール・プラントルさんも、作品集はないものかとAmazonを検索したが、購入可能なものは1冊しかないようだった。

初めて訪れたデザイン・クリエイティブセンター神戸。古い建物を再生し、洒落た雰囲気を作り出してはいたが、名称が仰々しい。大阪デザイン振興プラザが重なった。
画像はPhotoshopで補正した。アオリレンズが欲しかったが、ここまでできれば必要ないか。

メインエントランス。輸出生糸の品質検査を行う施設だったので、KIITOだそうだ。
講演会場に着くとすでに大勢座っていて、ブレット・リットマンさんもスタンバイされていたので、慌てて空いている席に座った。ブレットさんの隣の女性は展覧会場でもお見かけしたが、デザインやディレクターをされているそうで、今度の展覧会の発案者だそうだ。
彼女の仕事のウェブサイトを見てみると、昨春『虎屋 京都ギャラリー』で鑑賞した、『フィリップ・ワイズベッカー展|京都』の企画もされていた。その時受付の女性と少し話したが、虎屋の方ではなさそうだったので、この方だったのかもしれない。
講演は、イサム・ノグチ財団の方なので、知らないエピソードが聴けると期待したが、展覧会の復習をしているかのような内容で物足りなかった。最後の30分は、発案者がブレットさんへ質問し応答するかたちだったが、マイクの調子が悪いのか、発案者、ブレットさん共声が聞こえにくく、身に入らなかった。通訳の方のマイクだけが絶好調だったようだ。