球場を後にして「さてこれからどうするか」。直帰する気分ではなかったが、観たい映画はなかった。いやひとつあった。どうしても観たいわけではなかった『最後にして最初の人類』。監督をした方は贔屓だったが、公式サイトや予告を見ても食指が動かなかった。
3年前に急逝したヨハン・ヨハンソンが、生前最後に取り組んだ作品だそうだ。はじめは映画ではなく、映像を流しながらオーケストラが生演奏をし、それを鑑賞するスタイルだったとか。彼が亡くなったあと、別の作曲家が引継ぎスコアが完成したそうだ。だから連名なのか。
彼はこれまで映画音楽をつくってきた人なので、監督をしたと知って驚いたが、本作はいわゆる映像作品だった。旧ユーゴスラヴィアに点在する『スポメニック』の映像と、ティルダ・スウィントンによる朗読、ヨハン・ヨハンソンの音楽から成るシンプルな構成。
朗読の中身は同名小説の一部。原作というべきか。1930年の出版とかなり古い。『2001年宇宙の旅』を書いたアーサー・C・クラークは、「この本ほど私の生涯に影響を与えた作品はない」と言っているとか。2004年に翻訳本が出版されているが現在は絶版。古書はプレミアつき。
少しでも情報をと、A5サイズで32ページしかないのに千円もするパンフレットを購入したが、原作が一部掲載されていた。だから完全読本なのだろう。大層な副題をつけてこすいことをする。一部しか掲載しないとは蛇の生殺しではないか。
少ない情報を総合すると、20億年先に生きる人が、現代人の脳を操作してその原作を書かせている。人類は20億年の間に何度かモデルチェンジをし、20億年先の未来人は18代目の人類で、最後の人類なのだそうだ。どのように人類が20億年も続くのか、読みたくてしょうがない。