捧げる

運転免許証の更新の帰り、敷地内にある献血ルームののぼりが目にとまった。
献血をしてみたいと思いながら、あの空間の空気にうまく入り込めずにいた。目に見えない結界が張ってあるような気がした。でも今日はじめてその門をくぐった。
気持ちがそうさせたのだろうか。部屋を出るとき空は灰色に覆われていたが、新しい免許証をもらうころには雲ひとつなく、とてもよく澄んだ青色に変わっていた。微かに吹く風は少し冷たく、秋の気配があたりを包んでいた。
あるいは、最近知人が他界したせいだろうか。社会に出てはじめての仕事で知り合い、それから何度となく世話になった方。彼の死と直接のつながりはないし、彼が導いたわけでもないだろうが、彼の死によって気持ちが動いたのかもしれない。だから門をくぐることができた。