解夏

主人公たちを優しく包む長崎のまちがよい。石畳の坂、趣のある古寺、真白な教会。
キャスティングもよかった。難しい役を好演した大沢たかおさん。彼を温かく見守った二人の女性―石田ゆり子さんと富司純子さん。彼女たちの立ち姿は凛として気品が漂っていた。そして、松村達雄さんもいぶし銀の演技を見せていた。
この作品の監督・磯村一路さんは、むかし映画館で見た『船を降りたら彼女の島』の監督だった。瀬戸内の美しい風景や、主人公の揺れ動く思いを静かに綴った佳作。押尾コータローさんがつま弾くギターの音色が印象に残っている。
監督は美しい場所が好みのようだ。まもなく公開される『雨鱒の川』は北海道が舞台。『がんばっていきまっしょい』の舞台は愛媛だった。瀬戸内の景色は穏やかで美しい。

大阪日本民芸館

民藝に興味を憶えて久しいが、いまだ訪れていない場所が近くにある。それは万博公園にある大阪日本民芸館。ようやく訪ねることができた。
この施設は1970年の大阪万博のパビリオンとして、わが国の暮らしの美をテーマに、東京駒場にある日本民藝館が出展したもので、閉会後は西の日本民藝館として装いを新たに開館した。初代館長は浜田庄司さんが務め、現在は柳宗理さんが東京の日本民藝館と兼任している。
今度の企画は、庄内地方に伝わる伝統衣装破衣(かずき)と古丹波。破衣はむかし東京の日本民藝館でも見たのだが、あらためてその美しさを堪能した。古丹波ははじめてだったが、深い色合いや灰色の釉薬がとても美しいと思った。
土産はずっと読みたかった『少年民藝館』著者はやはり民藝運動を興したひとり外村吉之介さん。見せかけだけの駄目なものや、着飾っただけの怠けもの、高くて威張ったような道具ではなく、健康で無駄のない、威張らない美しさを備えた、よく働く工芸品たちを紹介している。
本を包んでくれた袋は万博のときのデッドストック。作りすぎてまだまだ余っているのだと、応対してくれた白川由美似のおばさまが話していた。

KAWAI KANJIRO

大山崎山荘美術館で『表現者 河井寛次郎』展を鑑賞。そのあと宝厳院や天龍寺も訪ねた。
寛次郎さんはつねに心の琴線を刺激する。それは、彼が陶芸家であり生活者だったから。
陶芸を愛し、暮らしを愛し、住まいを愛した。彼の住まい兼陶房であった『河井寛次郎記念館』へ行けばよくわかる。創意工夫がされた心地よさそうな住まいや陶房。その陶房から数々のすばらしい作品が生み出された。竹でできた家具や真鍮のキセルをはじめて見たが、かたちが後年の器同様にキテレツで、寛次郎さんの宇宙を垣間見た。
土産に買った図録は珍しく横長版で、作品のレイアウトも新鮮でよかったのだが、テキストがいけなかった。メタリック調の紙を使っているせいで、明かりのもとでは反射して読みづらい。デザイナーさんはがんばりすぎた。

住宅減税

住宅取得に関する税金の軽減措置が見直されるそうだ。これまでは新築に有利だった住宅減税。たとえば住宅ローン減税は、木造で20年、鉄骨造やコンクリート造で25年以内の建物でなければ適用されなかったが、来年度からは、築年数に関係なくすべての住宅に適用されるとか。
新築物件がなくなることはないだろうが、これからは中古住宅が増えるだろう。日本の全住宅に対する中古住宅の割合は11%。ちなみにアメリカは76%、イギリスは88%が中古住宅だとか。
ヨーロッパなどでは建物を壊したり外装を変更できないところがたくさんある。そうすることによって都市に歴史や文化が蓄積される。日本もスクラップアンドビルドはもうやめて、これからは良質な中古住宅を確保しなければならない。そのためには耐久性のある躯体や、インフィルを自由につくり変えながら住み継いでいけるような設えが必要だ。
住宅減税に併せ、居住用住宅の買替特例、住宅用資金の相続税の特例、住宅用資金の贈与税の特例、登録免許税の軽減措置、不動産取得税の特例などが見直されるそうだ。

ICHIRO

今朝はテレビに釘付けだった。イチローが前人未到の快挙を成し遂げる瞬間を目にした。
第1打席でジョージ・シスラーの記録に並び、第二打席でその記録を打ち破ったのだ。
とても感動した。観客やチームメイトの拍手喝采を浴び、はにかみながらも少し涙腺が緩んでいる姿を見て、こちらの涙腺もつられて緩んだ。
記者会見での彼の言葉。「自分自身の可能性をつぶさないで欲しい。自分自身の持っている能力を生かせれば、可能性はすごく広がると思う」心に染みた。
残りあと2試合。260本を超え、更なる記録を打ち立ててほしいと願っている。

毎日歳をとる

このところ頭痛と肩こりに悩まされている。毎日のように起き、ひどいときは何も手がつけられないほど。頭痛薬を飲んだり、マッサージをしたり、湿布を貼ったりするが、一向に改善する気配がないので、はじめてカイロプラクティックを受けることにした。
施術は約1時間。前半は全体の筋肉をほぐし、後半で痛むところを集中的に治療する。そして最後に腰と首の骨をボキッとやっておしまい。痛かったが気持ちよかった。
終わったあとは何となく楽になったようだった。運動不足と姿勢の悪さから体が相当固まっているそうで、数回は通ったほうがよいとのことだった。
普段は歳のことなど忘れていて、いつまでも若いと思っているが、体は日々衰えている。