中村さんと仲間たち

先日放送した中村好文さんの『プロフェッショナルの流儀』を繰り返し観ている。中村さんの仕事にはとても共感するし、中村さんの人となりは私の願望。なかなか彼のようにはなれないが、思うことは同じ。自分が楽しくなければ相手に何も与えられない。
家に仕えるとは素敵な言葉だ。クライアントのために家を設計するが、その前によい家をつくりたい、よい建築をつくりたい。それはいまファッション誌を賑わしているフォトジェニックなものや、建築家やクライアントのエゴとは無縁のもの。ただよい家のために働く。
今週から阪急百貨店で『欲しかったものできた展』が開催される。これは中村さんがリーダーとなり、彼の親しい作家たち(赤木明登、小泉誠、坂田敏子、高橋みどり、永見眞一、前川秀樹、三谷龍二、山口信博)を集め、生活を楽しく豊かにしようと開発したプロダクトの発表会。
じつに中村さんらしい展覧会。小泉誠×山口信博、前川秀樹×三谷龍二、赤木明登×坂田敏子×中村好文によるトークセッションもあるそうで、いまからとても楽しみ。
ちょうど同じ期間に、奈良のくるみの木も出張ショップを開くそうで、こちらも楽しみ。

世界を救う歌声

CDショップのレジ横でワゴンに積まれていた。Corrinne May?はじめて聞く名前だった。
CDの帯に『この世界を救えるのは、彼女の歌だけかもしれない』と刷ってある。この手のコピーときたら。でも試聴機のヘッドフォンから軽快なピアノのイントロが流れると、これはよいアルバムだろうと感じた。2曲、3曲と聴くと確信になった。しなやかで透き通る声に魅せられた。
6歳からピアノをはじめ、独学でクラシックを学び、バークレー音楽院で修練を積んだ。どの曲も正確で力強い。朝聴けば1日がんばろうという気持ちになり、眠る前に聴けばぐっすり眠れる。
いま彼女の公式サイトで全曲全コーラスが試聴できるので、試しに聴いてほしいと思う。

Gold

荒川静香さん、金メダルおめでとう。ミーハーな私は、エキシビションで流れていた『You Raise Me Up』をiTMSからダウンロードし、美しい歌声とメロディに浸っています。
銀メダル、銅メダルのふたりもすばらしい演技だった。彼女たちのあの転倒がなければ順位はどうなっていたか。いや、そんなことを考えるのはよそう。荒川さんの演技はとても丁寧で、しなやかで、バランスがよく美しかった。
イナバウワーが素敵だった。コーチに世界一美しいと言わしめた技なのに、新しい採点方式になり審査対象からはずれたので封印せざるを得なくなった。でも荒川さんは、「ポイントがつかなくてもいい。観客を喜ばせたい」と言って披露した。フリー演技終了後のあのスタンディングオベーションは、イナバウワーへの喝采も多分に含まれていたと思う。
オリンピックは世界一華やかなスポーツの祭典。それはかけ引きの競技の世界だが、一方で自分らしい演技、観客を魅了することのできる演技を披露することもまたオリンピック。記録に残る選手より、記憶に残る選手を見たい。

サービスとは心を配ること

触知案内板のレイアウトを考えていて手を止めた。理不尽なことをしていると思った。
私はかなりの近視だが目が見える。だから目の不自由な方々の胸のうちはわからない。
でもこれだけははっきりしている。たとえ施設の入口の床に点字ブロックがあっても、それがホールにある触知案内板へと導いてくれても、その案内板にある点字を指でなぞり、どこにどのような部屋や設備があるかを理解しても、そこから一人で進むことは困難なのだ。
お上はだれかが決めたこのシステムを強要し続ける。実際の使い手を思うことなく、マニュアル通りの指導しかしない。人のため弱者のためなのに、そこには一滴の血も流れていない。
そうかといってうまい解決策はあるだろうか。たとえばどんな施設にも受付を備え、望みの場所まで案内するとか、レシーバーを配って遠方から誘導するとか。どれも困難だろう。
となれば、施設運営者や設計士の想像力と心配りが大切。それなのに東横インの社長は、サービス業の冠のようなホテル事業が、社会に対しどれほどの重要性を帯びているかまったく認識していない。そうでなければあのようなコメントをするはずがない。それに比べ、先日テレビで見た老舗旅館の女将はすばらしい方だった。車椅子利用の客から、テーブルやベッドの脇を車椅子が通れず苦労したとクレームを受ければ、すぐにその部屋を改めた。
サービスとは、ひとりひとりにもてなしの心を配るということではなかったか。

IBM ⇒ Intel

PowerBookのCPUがIBMからIntelへ変わるそうだ。
なんでもIntelのCore Duoは、演算能力がG5より2~3倍、G4より4~5倍も早いのだとか。よくわからないが、とてもすごいことなのだろう。
Windows使いの素人にとっては、G5というネーミングだけですごいものだと想像しているが、パソコンの世界は今後もますます進歩してゆくのだろう。
Mac World Expoでのスティーブ・ジョブズの基調講演映像を見たが、Appleはプレゼンテーションがすばらしい。主役であるプロダクトのスライドが簡素でわかりやすく美しい。舞台は黒子に徹し、プロダクトとジョブズの言葉だけが浮かび上がる。

原始の森

昨年は仕事に忙殺され、あまりよいものを観ることができなかったので、今年はたくさん観ようと思う。実家からの帰りに書店へ寄り、上田義彦さんの『QUINAULT』を手に入れた。
上田さんをはじめて知ったのは、原研哉さんがブックデザインを手掛けた写真集『PORTRAIT』。敬愛する山本夏彦爺をはじめ、日本の知の遺産というべき方々の肖像を記録したもの。
QUINAULTとはアメリカンインディアンによって名づけられた原始の森で、人の手が一切入らない鬱蒼と生い茂った森だそうだ。日本では白神山地や屋久島などを思い浮かべるが、これらの森とはまったく異なる雰囲気を持っている。年中止むことがないという雨のせいだろうか、どの写真もしっとりしている。 幽玄が渾然となった美しい世界。