でしゃばらない

来年の手帳とカレンダーを買いに心斎橋へ行くと、そごうの隣りのビルが完成していた。
まるまるルイ・ヴィトングループのお店が入っているそうで、屋上には大きなキラ星が輝いている。凹凸のない真四角な建物は、低層部のほとんどを壁で閉じ、いちょう並木に溶け込むように考えたというマーブル模様の石はなんだか異様。たしか隈さんは、「これからは周囲を圧倒する『勝つ建築』ではなく、強いが見えない『負ける建築』」と言っていたのではなかったか。
建築家を含めデザイナーは自己主張の生き物。奇をてらわない方でも、ほんの小さな自分らしさを込めたいと思っている。かまわないのだが、それが品よくさりげなくできるかどうか。
先日出演していた番組を見て思ったが、深澤直人さんは少し毛色が違うようだ。
深澤さんのプロダクトは知っているが、人となりについては知らなかった。深澤さんのデザインがキラキラしていてまぶしいので、よく知ろうとしなかった。
IDEOでデザイナーとしての個性に苦悶していたころ、高浜虚子の『客観写生』に出会ったとか。「自分を打ち出すことは醜い。主観を消して淡々と描写してこそ人々の共感を呼ぶ」
たしかに、彼が参画している無印良品の品々は『客観写生』そのもの。個性を押しつけることがないので時代を超えて愛される。アノニマス。民藝の精神にも通じるだろう。
番組のワンシーン。小さな別荘で、麦藁帽をかぶり芝を刈りながら呟く。「世の中は複雑すぎる。本当はみんな単純なのに複雑になりたがる。草を刈るように単純に暮らせばいいのに」

もじら

大きなものに巻かれたくないので、ブラウザやメールソフトはNetscapeを使っている。
NetscapeにはMozillaという技術が使われていて、MozillaからもMozillaというブラウザが提供されている。中身はNetscapeと同じなので使ったことがないが、先日リリースされた最新バージョンは、これまでとはまったく様子が異なるようだ。
Netscapeではブラウザとメールソフトが一体だったが、ブラウザはFirefox、メールソフトはThunderbirdという名前でそれぞれ独立した。そしてスピードが早くなった。最新機能を搭載しながら徹底的にぜい肉を落としたそうで、たしかにFirefoxは起動が早かった。Netscapeの起動の遅さにイライラしていたので、これはとてもうれしい。
ブラウザのシェアはあいかわらずInternet Explorerが一人勝ちだが、Firefoxの登場によりその牙城が少しづつ崩れているとか。アンチーとしてはうれしい。

村上さん家

書店でアルネ最新号の目次を見ると、『村上春樹さんのおうちへ伺いました』とある。ページをめくると村上さんのお写真。これはプレミアだとそそくさとレジへ。
村上さんは表に出ない方なので、どんなお住まいなのかわからない。でも中村好文さんが設計したという噂を聞きつけると、あちこち情報を得ようとしたがわからなかった。だからこんなにうれしいことはない。大橋編集長ありがとうございます。

IBM PC

IBMがパソコン事業から撤退するそうだ。売り上げが減少しているこの部門を売却し、今後はサーバーの提供や関連サービスなど、法人へのサービスに集約するそうだ。
IBMはパーソナルコンピュータの礎を築いた企業。研究や開発向きだった高価なコンピュータを、市井の人々が使えるようにした功績は計り知れない。他の企業が時代に乞うて変化するなか、IBMは確固たるスタンスを貫いた。プロダクトをはじめとするデザインポリシーにブレがなかった。それはウェブサイトにあるデザインについてのページを見ればよくわかる。
売却先として中国企業と交渉しているようだが、成立すればIBMのパソコンはこの世から消えてなくなる。それは単にネームがなくなるということではない。
時代はますます安価で大量生産への道を進んでいる。否定するつもりはないし、私も恩恵を受けている。でもそれだけではいけない。それだけでは消費者の心が貧しくなる。

規格

市場からベータマックスが消えて2年。所有することはなかったが、つまらないデザインのVHSデッキに対し、まるでハイエンドオーディオのようなベータマックスデッキには憧れた。
後発のVHSに対してアドバンテージがあったはずだが、VHS陣営の巧みな戦略や、アウトソーシングのネットワークなどにより、VHSが世界のスタンダードとなってしまった。
デッキに限らず、規格というものはなんとかならないだろうか。歴史を見ても、複数の規格はひとつに収れんされると知っているのに、メーカーや開発者は自己満足を繰り返し、ユーザーのことなど少しも考えていない。
いよいよ次世代光ディスクが登場するが、もちろんここにも規格が複数あり互換性はない。だから規格が生き残る要となる映画ソフトを巡り、いまからハリウッドのビッグネームとの交渉に躍起になっているとか。いい加減にしてくれないだろうか。

禁煙国家

ブータンが世界初の禁煙国になったとニュースが伝えていた。国内での煙草の販売を全面禁止し、国外から持ち帰った煙草には100%の関税をかけるそうだ。
大したものだが本当に実行できるだろうか。疑問に思ったので、ブータンと喫煙について調べてみると、そもそもブータンの喫煙率はとても低かった。
ブータンはチベット系とネパール系の民族が大半を占めるが、山岳に住むチベット系民族は煙草を吸わない。また、敬虔な仏教国であるブータンでは、古くから煙草は悪とされているので、値段が高く設定されているそうだ。
一方、ブータンにはドマという噛み煙草があり、血行が促進されて体が温まるので、高地に暮らすブータンの人々は古くから嗜われていて、若者の間ではカンナビスという大麻が広まっている。もともと豚のエサとして与えられていたこの草は、いたるところに自生しているので規制が難しく、対策に頭を抱えているとか。