田中一光と和田誠

奈良県立美術館で田中一光展を観賞。カレンダーを確認すると10年ぶりだった。この美術棺は奈良県出身である田中一光さんの作品を多く所蔵しているので、定期的に展覧会が催される。
本展のタイトルは『デザインの幸福』。田中一光の発想1:顔・流水、田中一光の発想2:植物・文学、ロゴ・マークとCI、田中一光の「いろ」と「かたち」1ロープ・円・ピラミッド、田中一光の「いろ」と「かたち」2漢字・かな・記号の5章仕立て。
写真に写る『写楽二百年』や『Nihon Buyo』など、ポスター作品は大判でインパクトがあるので覚えているが、後半のグラフィックアートでは覚えていない作品があった。初見だったのだろうか。久しぶりに『綱』や『ロープ』シリーズを観ることができてよかった。

1階の展示室にはISSEI MIYAKEとの共作が展示されていた。一光さんの作品を取り入れたコレクションで、2016年より行われているプロジェクトだそうだ。初めて知ったが、展示室の隣には和室があり、第1弾の作品が展示されていた。この部屋のみ撮影可能だった。
この展示室について確認したいことがあったが、図録に収録されていなかった。持ち帰った「会場案内図」を見ると、この展示室は特別企画と書かれていた。展覧会とは別なので図録に収録されていないようだが、それならペラ1枚でも別に資料を用意してほしかった。
残念なことだが、図録には他にも残念な部分があった。シリーズ作品や連作は端折られ、ロゴデザインやパッケージデザインは収録されていなかった。なぜこのようなことをするのか。権利などで掲載できなかったのか。でもどこにも書いていないので単なる怠慢なのか。展示のすべてを収録しなければ図録とは呼べない。パンフレットと呼べばよい。
エントランス横のギャラリーでは、『イッセイミヤケのポスター展』と題した関連企画が行われていた。1987年から1999年まで続いた、三宅一生、アーヴィング・ペン、田中一光の協業によるISSEI MIYAKEのシーズンポスター。古さをまったく感じさせないので驚いた。
次は美術館「えき」KYOTOで和田誠展。一昨年に東京オペラシティアートギャラリーで鑑賞した展示の巡回展。内容が縮小されているそうなので二の足を踏んでいたが、せっかく関西で開催されているので観ることにした。ポイントがあったので近鉄特急で移動した。

興福寺へ寄り道をした。国宝五重塔の修理がいよいよ来月から始まる。120年ぶりだそうだ。
屋根瓦の葺き替えや木部の修理、漆喰の塗り直しなどが行われるそうで、1年かけて素屋根が組まれ、2025年から5年間にわたり修理が行われるようだ。完了予定は2031年春とのこと。国宝東金堂の前まで仮囲いがされるようなので、東金堂もしばらくの間美しい姿が観られなくなる。

和田誠展入口前の設え。東京会場とは異なる意匠だったが、イラスト共に好ましい。
お名前の英語表記が私と同じでニンマリした。姓名を逆にしない、性はすべて大文字、名はキャップのみ大文字。私はほぼ日の『すてきなふだん字』に影響を受け真似しているが、和田さんも同じということは何かの標準仕様なのだろうか。それにしても、和田さんは文字数が少ないので羨ましい。私は多く、「つ」や「し」も入っているので、タイピングがいつも面倒。

展示室の自動ドアが開くと、いきなり「歴柱」が立っていた。東京会場もそうだったので変わりはしないのだが、明らかに異なっていたのが照度。この美術館はそもそも照度が低い。おまけに天井が低く、黒くしてあるので尚更暗く感じてしまう。壁面のケースは頭越しに照らされていたので、すべて影になっていた。ノートに書かれた小さな字はさっぱり読めなかった。

平日昼間にたくさんのお客さんだったが、東京会場より少なかったので、「歴柱」のすべての面のテキストを読むことができた。7-8歳の面では、手指の指紋の観察日記に微笑み、78歳の面では、AD-LIB展でのコメントに涙腺が緩んだ。この年は急逝した水丸さんの分まで描かれた。
これほどすばらしい展示なのだから、相応しい会場で鑑賞したかった。上述の図録ではないが、すべてを見ることができない、ありのまま見ることができないのは、とても残念だし悲しい。岡山で鑑賞できなかったことが悔やまれる。改めて己の馬鹿加減が嫌になった。

展示室に場所がないので、美術館の外へ追いやられていた似顔絵。東京会場では高さを活かし壁一面に展示されていたが、こちらは2段が限界。でもこのほうが間近によく見えた。
記事タイトルはお二人の名前を並べただけだが、そういえばお二人に親交はあったのだろうか。独立する前は共にライトパブリシティに在籍されていた。年齢は一光さんが6歳上。会社には一光さんが2年先に入社し、和田さんとは3年ほど在籍期間が重なっている。
2012年に『21_21』で一光さんの展覧会が催され、和田さんは横尾忠則さんと鑑賞されたようだ。公式サイトのDOCUMENTSに記事があるが、そこに和田さんの感想が書いてある。”田中一光さんの色彩感覚、構成力、文字の扱い方、アートディレクション、すべての一光デザインの魅力にあふれた展示です”。仕事仲間というより憧れの先輩だったのだろうか。