合わない合鍵

ランニングのときは身軽でいたいので、キーホルダーから部屋の鍵だけをはずして持っている。スペアがないわけだが、つけ外しが面倒なので、早く合鍵を作らなければと思っていた。
地下鉄の改札口に靴修理店があり、すぐにできるというので作ってもらった。家に帰り、鍵穴に差し込んだら回らない。思わず吹いて鼻水が出た。まるで吉本新喜劇ではないか。
これまでにも合鍵を作ったことがあるが、合わない合鍵などはじめて。合鍵なのに合わない。プププ。怒るところなのに笑ってしまう。
店のお兄さんに、冗談で「完璧?」と聞いたのだが、これがいけなかったのだろうか。マスターキーと比べるとあちこち切込みが甘い。お兄さん腕悪すぎでしょう。

再会

大学の友人と卒業後はじめて会った。毎年年賀状のやりとりはしていたが、それきりで会う機会はなかった。卒業して20年経ったが、彼はなんら変わっていなかった。
年賀状である程度は知っていたが、波乱万丈面白い人生を歩んできたようだ。そしていまは趣味の延長のような事業を行っている。「これだけでは厳しいのでバイトをしないと」と苦笑していたが、好きなものを仕事にできることは幸せ。
がんばって。楽しい夜をありがとう。

devil’s hands

久しぶりのACO。お顔がアップだがどうしたのだろう。何か吹っ切れたのだろうか。
ACOは歌声が好きなので、『Lady Soul』や『absolute ego』のように、ヴォーカルがちゃんと出ているものが好み。音響やエフェクトにこだわった『irony』や『mask』は馴染めなかった。
本作はやはり吹っ切れていた。原点回帰なのだろうか。歌声は前に出ているし、トラックも度が過ぎていない。骨太なバンドサウンドをバックに朗々と歌い上げている。

雑種

今日のほぼ日の『脳の気持ちになって考えてみてください』はかなり面白い。

人類の遺伝子の中には、祖先であるネアンデルタール人の遺伝子が1%~4%くらい入っていて、すなわち混血。でもネアンデルタール人のミトコンドリアには混血の証拠はない。それはつまり、ミトコンドリアは母系にしか遺伝しないので、人類の雌、つまり女性とネアンデルタール人の男性による混血だったのではないか。
遺伝子的にいえば、人類は大雑把に黒人と黒人以外の2種類に分けられる。というのは、そもそもわれわれの祖先である人類はアフリカで暮らしていた。10万年くらい前にアフリカを出て行くまで、ずっとアフリカで暮らしていた。
アフリカを出て行った人類は、ヨーロッパやアジア圏に移り住み、それぞれ白人と黄色人種になった。アフリカに残った人類はアフリカ黒人になった。
一方、その前に誕生したネアンデルタール人は、やはりアフリカで誕生したあと、50万年以上前に、ヒトよりも先に全員アフリカを出て行った。つまり、その後アフリカを出て行った人類は、ヨーロッパやアジア圏でネアンデルタール人と出会った。そして交雑が起こった。
アフリカに残ったアフリカ黒人は、もはやネアンデルタール人はいないくなっていたので、交雑することはなかった。つまり、アフリカ黒人の遺伝子にはネアンデルタール人の遺伝子は入っていない。純血の人類だということ。

ほぼ日

なるほど。黒人がずば抜けた運動能力があるのは純血だから。一方われわれは雑種。ネアンデルタール人の血が入っている。ネアンデルタール人は筋骨隆々でずんぐりむっくりしている。だからおそらく走りは早くなかった。
池谷さんはあいかわらず面白い。久しぶりに『海馬』を読みたくなった。

瀬戸内国際芸術祭2010 3日目

今日も朝食はママさんお手製のパン。庭のテーブルでいただく。パンはいろんな種類があってどれも美味。コーヒーが入ったポットは猫のかたちをしていてキュート。
いよいよ最終日。今日は女木島&男木島へ渡るが、あいにくの空模様。雨男を封印して出発。

女木島では『かもめの駐車場』がお出迎え。遠く見えるは高松港。高層ビルが浮いている。名前は『シンボルタワー』なんのひねりもない。

船を降りて目に飛び込んだ石垣。横に長く連なっている。『オオテ』というそうで、冬に吹く潮混じりの霧状の風から守るためのものだとか。高さは3~4mありけっこう威圧的。時代によって異なる石の種類や積み方が、面白い景色を生んでいる。
女木島では福武ハウスをメインにいくつか廻った。レストラン併設の『不在の存在』は食事待ちの客で一杯で、作品鑑賞どころではなかった。金沢21世紀美術館のプールが好きなので期待していたのに。「客同士が出会い、食べることを共有できる場所を創出」とはただの食事処ではないのか。意図が見えずに困惑した。
鬼が棲むという山頂へ登りたかった。天気がよければ天望台からの景色がすばらしいと聞いていた。でもあいにくの曇天だし、バスの移動時間に余裕がなかったのであきらめた。

5つの島を巡ったが、アートや建築の魅力なら直島と犬島。でも島の魅力でいえば豊島、女木島、男木島がよかった。特にこの男木島の景色はすばらしかった。
集落が山に寄り添っている。港から細い道が駆け上り、迷路のように縦横無尽に敷かれていて、いたるところから穏やかな瀬戸内海が望める。特に豊王姫神社の石段からの眺めがすばらしく、泣きたくなるほど美しかった。

駆け足で巡った『瀬戸内国際芸術祭2010』だったが、時間がなく断念した作品がいくつもあるので、またいつか訪れたい。
3日間ともたくさんの人が来ていた。船は整理券を配ったり増便が出たほど。きっと大成功なのだろう。でもふと思う。島の人たちはどう思っているのだろう。歓迎しているとおっしゃった人もいたが、島のみなさんの評価を聞いてみたい。
都会とまったく異なる環境に、おそらく都会に住む人が多く訪れる。都会にあるものがなくて驚き、戸惑うかもしれない。でも島の人たちにしてみれば、この暮らしがふつうで、「そんなこと言われてもねえ」と困惑するかもしれない。
訪問者のモラルが大いに試される。その意味でもとても意義のあるイベントだと思う。帰りのフェリーのデッキで、美しい夕焼けを見ながらそんなことを考えた。

瀬戸内国際芸術祭2010 2日目

昨夜一番に眠ったようで、朝早くに目覚めた。のどが渇いていたので、飲み物を買いがてらすぐそばの漁港を散歩。人懐こい猫が遊んでくれた。
芸術祭は直島をはじめ大小7つの島に作品が展示してあるそうだが、島間の移動はもちろん船しかない。でもどれも小さく便数も少ないので、行程は船の時刻に縛られる。
今日は豊島と犬島へ渡るのだが、もっとも便数の少ない、それでいてもっとも人気のある島なので、船の時間を何度も確認した。
豊島での滞在時間は3時間。バスの中で時間を計算した結果、遠くにある『心臓音のアーカイブ』『ビューティ』はあきらめ、まだ建設中の豊島美術館周辺に的を絞った。

豊島美術館へのアプローチ。あまりに素敵なロケーションに言葉が出ない。まるで映画のワンシーン。自転車があれば、両足を思い切り上げて駆け下り、そのまま海へダイブしたい。
いくつか作品を観た中で、『ストームハウス』が印象的だった。嵐がやってきて通り過ぎるまでの10分間を再現したもので、叩きつける雨や稲光、ガラス戸を揺らす突風などを人工的に作り出す。この手はよくあると思うが、この作品が秀でているのは、実際の、しかも年月を経て古びた家屋を利用していること。ノスタルジックな臭いのするインスタレーション。
港へ戻り、待ち時間に昼ごはんを食べていると、あやうく犬島への船に乗り損ねそうになったが、なんとか乗せてもらうことができた。機転のきいた友人がいなければ、帰りの船の整理券ももらうことができなかった。

『犬島精錬所』は野又穣さんの絵の世界のようだった。三分一氏の施設や柳氏の作品も見応えがあったが、この遺構にはかなわないだろう。
この煙突は繁栄や衰退を見つめてきた。ここで働く人々の喜びや悲しみを見つめてきた。そしていよいよ朽ち果て崩れ落ちようとしている。次に来る時はなくなっているかもしれない。そのあと『家プロジェクト』を観たが、きれいで薄っぺらくてなんだか空々しかった。
直島へ戻り、汗を流しに銭湯『I LOVE YOU』へ。用途が用途なので『はいしゃ』ほどのやりたい放題はなかったが、象のお尻には赤面した。やんちゃな車についているシフトノブのようなカランが欲しくてたまらなかった。