スレンダー

下はふつうの三角スケール。上はワークス松下さんの『ナノ三角スケール』。断面は1/2。
仕事で出かけるときは三角スケールをペンケースに忍ばせて行くのだが、ペンケースが小さいのでパンパンに膨れてしまっていた。でもこの三角スケールを見つけたとき、これならすっきり収まるだろうと思った。つまみにくいし転がしにくいが致命的ではない。

そしてこれが画期的な三角スケール。その名も『A列コピーダウンスケール用三角スケール』
A2サイズの図面をA3サイズに縮小すると、70.7%の縮小となりふつうの三角スケールでは数値を読めない。電卓叩いて換算するか、三角スケールを複写台に載せ70.7%にコピーするか。
ところがこの三角スケールは、はじめから70.7%に縮小して目盛が打たれている。だから換算は必要ない。このようなニッチなものをよくぞ作ってくださった。
このメーカーの三角スケールはアルミ製で、目盛がレーザーで打たれている。目盛の色はあとからつけるのではなく、色をレーザーで焼きつけているので剥げることがないのだとか。とても素敵なこだわり。MADE IN JAPANがまぶしくて涙が出る。

Carte

寒風吹き荒ぶなか恵文社一乗寺店へ。お目当てはロベール・クートラス展。昨年末『暮らしの手帖』で紹介されていたのを見て衝撃を受けた。
それは石井一男さんの絵を観たときと同じ感慨だった。石井さんの絵もクートラスさんの絵も、背景が暗く塗りこめられていて、苦悩や挫折や切望が現れているように見える。
現代のユトリロとも評されたが、画壇に背を向け自らの井戸へ降りていき、『カルテ』の制作に没頭した。55歳で亡くなるまで日夜描き続け、その数は数千枚に及ぶそうだ。
その『カルテ』が展示販売されると聞き、あわよくば手に入れられるかと期待して訪れたが、石井さんのときと同じですでに完売だった。初日に行かないといけない。代わりにこの小さな作品集と、柏木博著『玩物草子』を購入。いつか手に入れられる日を夢見たい。
柏木博さんの本は興味深かった。ご自身の生業であるデザイン論を交えながら、『カルテ』を含めたコレクションを紹介をしているのだが、敬愛する中村好文さん設計のご自宅の写真もたくさん掲載されている。ところで中村さんも大の『カルテ』コレクターだった。『Come on-a my house』で紹介されているのにとんと忘れていた。

最後の忠臣蔵

今年最後の映画。終始泣きっぱなしだった。これまで観たなかで一番泣いた作品かもしれない。ラストシーンは嗚咽をこらえるのに必死だった。
監督は杉田成道さん。この方が監督なので観ることにした。彼は20年におよぶ『北の国から』の演出で、深い愛をもって人間を見つめてきた。だから間違いはないと思っていた。
キャスティングに唸った。瀬尾孫佐衛門に役所広司さん、寺坂吉右衛門に佐藤浩市さん、大石内蔵助に片岡仁左衛門さん。そして可音に桜庭ななみさん。まだ若い彼女は監督にかなり鍛えられたそうだが、それがしっかりと実り、堂に入った演技をしていた。
この作品は純真で無垢な侍の魂を描くとともに、時代劇でありながら叙情的なラブストーリーに仕立てられている。史実では瀬尾孫佐衛門は討ち入り前に逐電したそうだが、この作品では大石の妾とお腹の子を守るよう命ぜられる。主君に忠誠を誓った孫佐は可音を隠匿し、16になるまで育て上げる。たったふたりきりの暮らし。そこに慕情が生まれないわけはなく、可音は孫佐を慕い、孫佐も可音を密かに想う。近くに住み、ふたりを援助してきた元太夫のゆうも孫佐を慕っている。可音の婚礼のあと孫佐に想いを打ち明けるが、孫佐はやり残した仕事があるといって拒む。そのやり残した仕事があのようなことだとは。
忠臣蔵は人形浄瑠璃の演目の通称だそうで、この作品には浄瑠璃のシーンが挿されているのだが、その演目が『曽根崎心中』。冒頭のシーンがすばらしかった。
音楽はピアニストの加古隆さん。彼の切ない旋律が流れるたび涙がこぼれてまいった。

有終の美を飾る

サントリーミュージアム天保山の営業最終日。たくさんの客で賑わっていた。
営業期間は16年だったそうで、長いか短いかわからないが、とにかくいろいろな展覧会を観賞した。中でもコレクションを代表するグラフィック作品の展示は欠かさず鑑賞した。だから最後の展覧会がポスター展というのはうれしかった。この美術館らしいとニンマリした。

写楽の文字は中川憲造さんで、その上は永井一正さん。右奥の日本は田中一光さん。

ミュージアムショップの壁には小ぶりなサイズ。ヨーロッパのポスターが並んでいた。
施設は大阪市へ無償譲渡されるそうだが、果たしてうまく利用できるだろうか。

TRON: LEGACY

まさか続編が作られるとは。前作の公開は中学生のころなので、30年ぶりになる。
前作で15分しか作れなかったフルCGは、現在では意のままに作れるが、前作の世界観を壊さないように抑制がきいていた。Daft Punkの音楽が耳に心地よかった。

大和文華館

名品が多数所蔵されていると知り、ちょうど耐震改修を終えてリニューアルオープンするというので出かけたら、設計は吉田五十八さんだとおっしゃるので驚いた。
どうりで配置がすばらしかった。林のなかを緩やかに上るアプローチ。右にカーブし、さらに上ると建物が見えてくる。ファサードの要であるなまこ壁は、瓦ではなく青緑のモザイクタイル。なぜなまこ壁なのかわからないが、伝統的な意匠がモダンへと昇華している。
このなまこ壁はすべての壁を巡っているが、近づくとタイルがなく穴があいているところがあり、その奥に建具が嵌っている。ダブルスキンになっていて、採光や換気をとっている。なまこ壁を途切らせず通すためのディテール。感服した。
展示室は内装を一新したそうで、中央の坪庭からの明かりがうっすら室内を照らし、この庭を囲うように作品が展示されていた。はじめて観た国宝の『寝覚物語絵巻』や『婦女遊楽図屏風』、尾形光琳の『扇面貼交手筥』などが印象的だった。
駐車場脇に建つ木造建築に違和感を覚えていたが、辰野金吾が設計した奈良ホテルの一部が移築されたものだそうだ。ただの木造建築でないと思っていた。