瀬戸内国際芸術祭2010 1日目

あいにくの雨。呪われる雨男。
久しぶりに嫁子供抜きのおじさん7人の旅。行く先は『ART SETOUCHI 2010』先日桂離宮を拝観したあとの暑気払いの席で、話しが盛り上がり行くことになった。
7:30にピックアップしてもらったが、ルームミラーがはずれるというハプニングの復旧に手間取り、宇野港へ着いたのは正午前。12:15のフェリーになんとか滑り込んだ。おかげで昼飯を食べ損ね、直島へ着くなりSANAAの船着場でうどんをかき込んだ。
今日は一日直島で、まずは整理券の必要な『地中美術館』へ。チケットセンターで数十分待ちと言われたが、建築を鑑賞していたらすぐに順番がきた。

クロード・モネとジェームス・タレルとウォルター・デ・マリアが安藤さんとがっぷり四つに組み、彼らの作品のための空間を用意するというまことコンセプチュアルな設え。作品にグッと来るものはなかったが、久しぶりに身震いのする安藤建築だった。
それよりも白装束の係員たちが可笑しかった。コンクリートのベンチや石の壁を小突いただけで注意され、友人などは作品のないただの休憩室を撮影しただけで、どこからともなく係員が忍び寄り、「いま撮った写真を消去してください」と血の通っていない表情で注意されていた。建築も作品なのだろうが、あまりに執拗なのでなんだか白けてしまった。きっと繰り返し注意をしてお疲れなのだろうが、サービスの心がないように思えた。
次に向かったのは『家プロジェクト』周辺。むかし来た時にはなかった『護王神社』のガラスの階段。艶めかしくもあり、水あめのようでおいしそうでもあり。

最後にできたばかりの『李禹煥美術館』へ寄ろうとしたが、幹事の段取りが悪くあきらめた。代わりに『かぼちゃ』やベネッセハウスを散策して本日は終了。
宿の名前は『はなれ』思った通り部屋が離れだから『はなれ』おしゃべり好きでフレンドリーなママさんが、愛犬モモと一緒に迎えてくれた。

夏の陽と秋の風

9月も終わりだというのに30度を超える日がある。今年はたしかに異常気象だ。でも陽射しはきつくても空を見上げれば雲は高く、イワシの群れも泳いでいる。夜ともなれば、開いた窓からは涼しい風がそよぎ、いよいよ秋の音楽が恋しくなる。
買い物ついでにCDショップへ寄ると、新譜コーナーに『Sara Gazarek』の名前を見つけたので手に取った。オリジナルアルバムではなく、ドイツの『triosence』というピアノトリオのアルバムで、彼女がゲストヴォーカルとして参加している。日本版ではボーナストラック2曲を含め全曲彼女が歌っている。だからこれは『triosence』のアルバムではなく、サラのアルバムだと言ってしまいたい。それほど彼女が引き立っている。
曲はすべてオリジナルだそうで、バラエティに富んでいる。洗練されているが、どこかしら田舎の風景を想像する。お陽様を浴びながら聴きたいアルバム。ジャケットで女性が座っているのはグランド・キャニオンだそうだが、アルバムを聴きながら眺めれば大草原にも変容する。

木造建築

ケンプラッツにおもしろい記事が掲載されていた。マンガ『美味しんぼ』の中で、「日本の家屋で国産材の使用率が著しく低い一因は、日本建築学会(AIJ)が1959年に木造建築を否定したため」とのセリフがあったそうだ。
放っておけばよいものを、事実確認の問い合わせがAIJに寄せられたので、これはまずいと思ったのか、AIJのウェブサイトで釈明した。「たしかに木造建築禁止を訴えたが、それは伊勢湾台風のときにまとめたものの中に書いたこと。日本中の木造建築を指しているのではなく、災害危険区域内での木造建築を禁止すべきだと訴えたまで」
なかなかおもしろい記事だが、国産材の使用率が低いのはこのためではなく、外来材に圧倒されているからではないのか。それは、引いては敗戦や近代化にまでさかのぼるだろう。
焼け野原になり、住むところを失った国民に対しての政策が、火に弱い木造ではなく、鉄筋コンクリートでできた集合住宅だった。復興に励み、明るい未来を夢見た国民はこれに飛びついた。がむしゃらに働き、高度経済発展を遂げた結果、都市はおろか地方にまでこの住宅形式が林立した。おかげで日本の林業は衰退し、いつのまにか外国から安価な木材が輸入されるようになった。よかれと思って行った政策が、時を経て仇となってしまった。
もうひとつの要因は教育だろう。これも同じマンガのセリフにある。「一級建築士の試験では木造について一切扱わないし、大学でも木造建築を教えない」これについてもAIJは釈明している。「一昨年の試験には木造に関する問題があるし、改正建築士法では、大学で木造等を勉強しなければ受験資格がないと定められた」林野庁も今年5月に『公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律』を制定したが、いずれも最近ようやく立ち上がったという感じ。設計する側も、そもそも100年前に、近代建築を夢見た建築家たちが木造を捨てたのではなかったか。

桂離宮

はじめての桂離宮。ウェブサイトの申し込みページはいつも満席で、それならばと往復はがきで申し込んだら即当選。拍子が抜けた。
桂離宮は宮内庁の管轄なので申し込みが面倒なわけだが、それは見学とて同じだった。自由行動はNGで、列になって決まったコースを進む。コースが決まっていても自分のペースで歩ければよいが、列の前後にいる皇宮警察官にペースを決められてしまうのでゆっくりできない。
解説スポットがあり、とても詳しく説明してくれるのはありがたいが、それ以外の場所では立ち止まれない。この写真も瞬時に撮影した。これでは実にならない。脳裏に焼きつかない。
もうすこしなんとかならないのだろうか。ならない?ならば何度でも訪ねるしかない。

JWCAD 20th

20周年おめでとうございます。11年ものあいだ利用させていただきありがとうございます。
ほかのCADは知りませんが、あなたが一番だと思います。なんといってもタダです。だから日々感謝しながら使わせていただいています。ありがとうございます。
世の中はBIMとかいう新たなシステムが登場しましたが、あなたには関係ありませんね。それでいいと思います。あんなものはゼネコンや大手設計事務所がやればよいです。AUTODESKの押し売りです。生産性の向上や品質の管理をするために、下ごしらえがどれほど面倒か。
とにかく私は、この仕事をやめるそのときまで、浮気をせずにあなたを使い続けます。ですからどうか、いつまでも続けてください。

なみだをふいたら、ごはんにしよう。

料理は人を幸せにするといわれるが、飯島奈美さんのつくる料理ほど当てはまるものはないと思う。飯島さんはフードスタイリスト。テレビドラマや映画に登場する料理を作る。『消えもの』と呼ばれる脇役の料理を、みごと主役級の座まで押し上げた方。
彼女のことは『かもめ食堂』で知り、その後も『めがね』『のんちゃんのり弁』『プール』『深夜食堂』『南極料理人』と、彼女の料理が登場する作品はすべて観た。彼女のつくる料理を見ていると、食べてもいないのに自然と笑みがこぼれてしまう。
現在放送している『天使のわけまえ』というドラマにも、飯島さんの料理が登場する。観月ありささん扮する主人公が、おばあちゃんから教わった家庭料理をいろんな人に振る舞う。イッセー尾形さん扮する工事現場のガードマンにおはぎを振る舞い、ともさかりえさん扮するセレブの奥様に太巻きを振る舞う。大滝秀治さん演じる祖父が、孫を気遣い秋田からお米やたくさんの食材を送ってくれる。昨夜の放送では、自ら上京して郷土料理のきりたんぽを振る舞った。振る舞われた人はみんな笑顔になり、それを観ている私もまた笑顔になった。笑顔の連鎖。
大好きなイッセーさんや、大滝さんの演技が絶妙で、河口恭吾さんが歌う主題歌『名もなき花よ』の詞(コシノヒロコ作)がとても美しい。